慶應義塾幼稚舎で長年クラスを担当してきた経験をお持ちの高山理先生がお書きになった「私が40年間実践してきた慶應義塾幼稚舎での教え方」です。このような名門私学とはご縁がない我が家ですが、周りには幼稚舎受験の準備に奮闘しているご家庭もあります。その幼稚舎への熱意たるもの、「生半端なものでは受からない」とばかりに熱心なこと。ただただ感心させられるばかり。

慶應幼稚舎の何が一体、そこまで親御さんたちを夢中にさせるのか。幼稚舎の教育とは具体的に何なのか。という本質的な疑問がこの本を手に取った理由です。幼稚舎受験のテクニックには触れていませんが、ひとりの先生がご自身の教え方、幼稚舎の教育方針について語ります。

幼稚舎の教育方針の中でとりわけユニークな点は、「6年持ち上がり制」というものがあり、つまり6年間クラス替えがなく同じ先生が担任であり続けるものです6年間ずっと同じではフレッシュさに欠けるし万が一担任との相性が悪かったらやり直しがきかないのではないか。とやや懐疑的な印象をはじめは受けましたが、本書を読み終える頃には考え方が変わっていました。(「6年持ち上がり制」をはじめとして、これらの情報は執筆当時のもの、とご理解下さい。最新情報は、ご自身で今一度ご確認をお願いします。)

親として我が子を見る視点というのは私の場合、ついその時点(=点でみる)での学年相当の学力なり生活習慣が身についているかという判断基準になりがちですが、6年持ち上がり制を数サイクル経験された著者の語り口に触れるにつれ、そうではなく子供が数年のスパンで精神的に大きく成長してゆく過程(=長い線でみる)がイメージできるようになりました。

つまり、これまで私は自分の子供を「小学3年生だから小学3年生向けの算数の問題が解けるべきだ。3年生の漢字がすべてか書けなければいけない。」という観点でばかり子供を評価してしまいがちでした。しかし、この先生の語り口を読み進むに連れ、そういった断面的な見方ではなく、何年もの時間をかけて子供のより定性的な成長過程を見守るきっかけを与えられたような気がします。

「自由でもよい。しかし、その自由に責任を持つこと。」なかなか深いのですが、幼稚舎でなくともどの家庭内でも子供に伝えたい大事なエッセンスです。こういうテーマを伝えることは、何歳だから、何年生だからという断面的な切り方ではなかなか難しいものです。子供にとって担任の先生は(一般的に)1年ごとにころころと変わってゆくものですが、親はそうはいきません。「人の話をきちんと聞くこと」「自由をわがままとはき違えてはいけない」などのメッセージを子供に伝え続け、それが本当に子供に伝わるまで、というのはとても1年間では完結しないわけです。何年、何十年もかかるでしょう。著者の語り口は、まるで親が我が子を見守るような気持ちで実に忍耐強く生徒に接する姿勢そのもの。変わらぬメッセージをブレずに6年間伝え続け、担任を終えて生徒を送り出す。私も我が子の成長をそうやって見守ってやりたい、という気持ちになりました。

Web: 慶應義塾幼稚舎

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