パリの大学で学んだあとフランスに住み翻訳家・エッセイストとしてご活躍の著者による「哲学する子どもたち」。フランスの教育事情を書いた本です。本書の著者は実際に二人のお子さんをフランスで育てながら実際に目の当たりにした教育の中身の違いについて、折に触れてバカロレア試験ではどのように出題されるか、という点も説明しています。

教育システムについて基本的な日仏の違いに触れられたあと、実際の学ぶことの中身の違いについて書かれています。なるほど、とうなってしまったのは、「フランスでは"哲学をすること"が要求される」というくだりです。それは、過去に著名な哲学者が説いた考え方を学ぶこととは違い、生徒一人ひとりが「哲学をする=自説を展開する、抽象的にものを考えて他人にそれを示す」ことが要求されるということを意味しているというのです。試験においても、序論・本論・結論から成る論述文によって、同時に用語の定義づけも行いながら回答しなくてはいけないのです。大人顔負けというか、これ大人でもできないかも...。という不安が頭をよぎってしまう内容です。日本だったら「○○論を説いた哲学者はだれか。」とか、「サルトルの思想のうち正しいものはどれか。A,B,C,Dから選べ。」と出題されてしまうかも...。

日本において子どもがいわゆる「作文」を書く際、その多くは「ディズニーランドに行きました。楽しかったです。」という行動をメモする日記タイプのもの、もしくは読書感想文タイプのような、自分が読んだものや経験した出来事に対して主観的な感想を述べる形式が主流のように思います。一方でフランスではどの教科でも論述させる問題が多いため、どれだけ知識を持っているか(=覚えたか)だけでなくその知識をどう「裏付ける」のか、知識をつかうところまでを書く訓練がバカロレアの試験準備と並行して行われるわけです。

2020年を区切りに日本の大学入試が大きく変わるといわれています。フランスの教育システムやバカロレア試験を横目にみながら、日本の新入試システムが「考える力そのものを測る試験」にどれだけ近づけることができるのかを考えさせられました。