アメリカの私立高校でAPコースを廃止する動きがあるそうです。
APとは、Advanced Placementの略で、アメリカの高校が提供している科目別のコースです。高校のうちに科目を選んで受験しその成績が良ければ(5段階評価で3以上)大学の教養学部の単位にカウントしてくれる、というものです。高校卒業までに好成績でAPを取得していれば、当然ながら成績優秀であることをアピールできるという点で大学受験時に有利です。試験はSATをやっているCollege Boardという組織が運営していて、毎年春に受験できます。高校では各科目のAPコースを提供していて、限られた優秀な生徒がそれを履修します。春に行われるAP試験を受け、より高い成績を狙います。難関の大学を受験する準備として位置付けられているものです。(高校のうちにより多くの科目でAPを取得してしまえば、それが大学の単位として認定されますから、大学入学から卒業までの期間を短縮することにもなるようです。)
そのAPコースをワシントン界隈の優秀私立高校が相次いで廃止する意向を表明したそうです。(2018年夏くらいの出来事です。)難関大学を受験する予定の最優秀層の高校生を抱えているであろう名門私立高校が複数で共同声明を発表しました。
( Inside Higher Ed「Rejecting AP Courses」より引用)
「APコースを廃止し、優秀生徒向けに高校は学校独自のコースを開発する。」と。生徒の「innate=本質的な」好奇心、勉強意欲の向上と学びに対するパッションを追求できるようなカリキュラムを作り上げてゆく、と言っています。
既存の大学受験戦争では、いかにAP科目を好成績で積み上げてゆくか、ということを念頭においたカリキュラムが重視されていたのだと思います。2017年の時点で100万人をはるかに超える数の高校生がAPコースを履修していたそうです。日本国内のインターナショナルスクールにおいても、ハイスクールのカリキュラムを見てみればIBをやるのか、APをやるのか、どちらの路線かを選んだ上での(米国大学)受験準備となる様相のようです。例えば、IBカリキュラムを取らないThe American School in JapanやInternational School of the Sacred HeartではAPコースを提供しています。
(Inside Higher Ed「Rejecting AP Courses」より引用)
「改良の試みはなされているのだろうけれど、APテストは結局時間を測った上で行う標準テストに過ぎず、生徒が質問を提議したりディスカッションを行ったりすることを働きかけたりはしないものだ。APの替わりに、それよりも生徒の知的好奇心を膨らませることができるような手法をとりたい」というのが、こうした高校の動きの背景にあるようです。
学びの手法が暗記・試験重視から抜け出して一歩先へ向かって動いているのだ、ということを実感させられる大きな方向転換だと思います。アメリカの名門大学入学を目指す生徒たちにとって、見逃せない話題だと感じました。